『PERFECT DAYS』 私にとっての完全な日々とは何なのだろうか…?
『ベルリン・天使の詩』(そう言っても、若い人は知らんかもしれんが)のヴィム・ヴェンダースの新作である。本年度アカデミー賞国際長編映画賞のノミネート作品である。
ストーリーについては何も書かない。なぜなら、複雑さは一切ない話で、言葉にすれば簡単に書けてしまうから。
(まだ観ていない人で、ストーリーを知りたい人は、公式サイトの『Days of HIRAYAMA』を読むといいと思う。お話し的には、それがすべてだから…)
正直、劇場で同じ列だった男性客は、気持ちよく寝息を立てていた。
まあ、わからないではない。
では、つまらないダメな映画だろうか?
いい映画でしたよ、間違いなく。
このブログでも書いたが、『夜明けのすべて』という映画がある。これも何も起こらない映画だった。
私も一定の評価はしているが、あれとて、主人公にPMSやパニック障害という枷があった。(まあ、それらは作中何も解決しなかったが)
この『PERFECT DAYS』という映画では、主人公の平山がどういう人であるかさえ示されない。(父親のくだりで、涙するシーンがあったが、それがどういうものなのかも示されない)
トイレ掃除の仕事を日々行い、オールディーズを聴き、本を読み、休みの日には少しのお酒を嗜む、ただただ、そんな日々を黙々と過ごしてゆく。
しかし、それがいいのだ。
役所広司がいいのだ。三浦友和もいいのだ。
さして難しい撮影もエフェクトもない。アスペクト比は、昔のテレビと一緒の4:3だ。
でも、それもいいのだ。(「何がいいか」は誰も説明できない気がする…)
この映画を観て、ふと考えた。私にとっての『PERFECT DAYS』とは。
今、うまく行っていないことも、うまく行かなかった人との関係も、そういうものもすべて肯定していいのかもしれない。
いや…、ダメだな。もっと稼ぎたいし、欲望は素直に実現したい。
でもまあ、そんなことを考えられることも幸せなのか?PERFECT DAYSなのか…。