祝ラジー賞『マダム・ウェブ』

皆さんは、ゴールデン・ラズベリー賞(通称:ラジー賞)をご存知だろうか?
アメリカの映画祭で、アカデミー賞授賞式の前夜に「最低の映画」を表彰するものである。
映画製作に携わってきた者として「そんなことする必要あるの?」とも思うが、まあ、アメリカのことだから、多めに見るとして…。

今年、そのラジー賞作品賞に選ばれたのが『マダム・ウェブ』である。

<ストーリー>
ニューヨーク。救急救命士として働くキャシー・ウェブ(後のマダム・ウェブ)は、一人でも多くの命を救うため日々奮闘していた。ある時、救命活動中に生死を彷徨う大事故に巻き込まれてしまう。それ以来、キャシーはデジャブのような奇妙な体験を重ねるのだった。
自分に何が起きているのか戸惑うキャシーだったが、偶然にも出会った3人の少女たちが、黒いマスクの男に殺される悪夢のようなビジョンを見てしまう。それが未来に起きる出来事だと確信したキャシーは、少女たちを助けることを決意。未来が見えるという不思議な力を使い何度も危機を回避するが、謎の男はどこまでも追ってくる…。男の目的は一体?なぜ執拗に少女たちを追うのか?
やがて明らかになる、少女たちの<使命>とキャシーの能力の秘密。少女たちを守る先に、彼女が救うことになる<未来>の正体とは――?

正直な感想で言えば「そこまでひどくないのでは?」とも思うが…。
(私は、そこそこ楽しめた)
しかし、選ばれる理由があるとも感じた。

まず、根本の企画がいただけない。
蜘蛛の毒(力)って…。「『スパイダーマン』じゃん⁈」。
最終的に(というより次作から本当のシリーズが始まるのだろう)目の見えないマダム・ウェブが椅子に座り指示を出して、(スパイダーマンのような)ピチピチの衣装を着た女の子三人が戦う…。「これ『X-MEN』では⁈」。

脚本や演出面でも、マダム・ウェブが予知夢を見る瞬間や現実に戻るプロセスがイマイチ映像上分かりづらかったり、蜘蛛の力を得た悪(エゼキエル)の背景がイマイチ、ピンと来なかったり、こんなバケモノに普通に人間の仲間がいたり、何しろ悪者の動きが「スパイダーマン」その物だったり…。
キャスティングも、有名な俳優が出ていないことはまだしも、エゼキエルに迫力がないから、あまり怖くないのも問題だし。
そういう訳で、色々ツッコミどころは満載である。

だからと言って、決して面白くなかった訳ではないのだが、企画60点 × 脚本60点 × 演出60点 × キャスティング60点のギリギリ落第点を積み重ねたら0.6の四乗=10点台の作品になってしまったというところではないだろうか。

エンディングは、どう考えても続編アリな流れである。
こんな評価を受けて、どうするのだろうか…?