映画『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』

面白い映画だった。
正直、私は年を取ったとはいえ、ボブ・ディランの世代ではない。
もちろん「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリングストーン」など大好きな曲もある。
しかし、彼の全盛期(まだバリバリ現役なので、失礼か…)によく聴いていたというような世代でもないので、劇中出てくるような「時代感」は共感できない部分もある。
とはいえ、面白いのだ。それは観ていただければわかると思う。
<ストーリー>
1960年代初頭、後世に大きな影響を与えたニューヨークの音楽シーンを舞台に、19歳だったミネソタ出身の一人の無名ミュージシャン、ボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)が、フォーク・シンガーとしてコンサートホールやチャートの寵児となり、彼の歌と神秘性が世界的なセンセーションを巻き起こしつつ、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでの画期的なエレクトリック・ロックンロール・パフォーマンスで頂点を極めるまでを描く。
ティモシー・シャラメ、全部生歌らしい。驚きだ…。
その歌唱クオリティもすごいし、再現度も素晴らしい。
『アリー/スター誕生』のブラッドリー・クーパーもすごいと思ったが、これがエンターテインメント王国アメリカの(ハリウッドの)底深さだろうか。
こんなにも似ていて、歌唱力がある俳優が簡単に(?)キャスティング出来るのだから。
日本では、(確実に)こうはいかない…。
しかし、「日本では」などと書いたが、日本人も頑張っているのだという事象もある。
ピート・シーガー(エドワード・ノートン)の妻 トシ役を演じたのは、初音映莉子なのだ。
もしかして知らない人も多いかもしれんが、映画『うずまき』で主演した、あの初音映莉子だ。
私は仕事もしたことがあるし、この出演に至る途中段階(あまり仕事がなかった時代)にも、お会いしたことがある。
少なくてもその当時は、英語力もさほどでもなかったと思う。
まさかこんな大役を、オーディションではなく、監督からのご指名で演じていたとは…。
はっきり言って、もっと話題になってもおかしくないことなのに、これに関するメディアの扱いはほとんどなかったのではないだろうか?
おそらくアメリカ音楽映画は、なかなかヒットしないし、興行的には難しいかもしれない。
しかし、私は、初音映莉子の活躍も含め、いい映画を観ることができたと思った作品であった。