アマプラ『推しの子』ドラマ版

12月20日に公開される映画『推しの子』。これは、その前段を描いたドラマ版の話だ。
Amazon Prime ビデオで全8話が公開されている。
私はアニメも観ていないので、新鮮な気持ちで観れたしすごく面白かった。

原作アニメファンの中には「キャストのイメージが違う」という声もあるようだが、原作を知らない者である私には、そういった先入観は一切ないので、皆「はまり役」のように思えた。

特に面白かったのが、原作漫画を連ドラ化するくだりだ。
完全に『セクシー田中さん』を意識している(としか思えない)。
すでに公開されているのに、「よく話題(問題)にならないなあ…」と心配してしまうほどだ。

なぜなら、志田未来演じる漫画『東京ブレイド』の原作者 鮫島アビ子は、ドラマのクランクイン直前に脚本にNGを出して、自分で書くと言ってしまう。
さすがにこの展開をやってしまうのには驚いた。

しかし、ドラマとしてのその描き方は、私は秀逸だと思った。
それは、それぞれのキャラクターにプロとしての自覚と人間味があるからだ。

少なくても、起こってしまったあの事件のリアルと違うのは…。
脚本家GOA(戸塚純貴)が、最初こそ、その事態に怒っていたが、「ケツをまくって」降りることもなく、最終的に原作者を敬いつつ自分の意見も入れながら、根気強く脚本を仕上げていく。そのプロとしての姿勢の違いだ。

そして、高圧なだけの局Pに反して、若く優秀な制作会社P(中村蒼)も、原作者に対し時にやさしく、時に脅しを入れながら、双方が納得する脚本を仕上げてゆく。
その熱意と粘りに、非現実とわかっていながら、私はすごく感激してしまった。

同時に、これは現状への批判でもあると思うのだが…。
局Pも出版社担当も無責任、否、仕事に対していい加減な姿勢で臨んでいる。
それこそが、この前起きてしまった事件の本質でさえあるような気がしてならない。

まあそこは、業界人としての私が面白かったところで、あくまでディテールである。
この物語の本質は、母親であるアイ(齋藤飛鳥)を殺した真犯人に近づいてゆく兄妹(櫻井海音、齊藤なぎさ)の復讐譚、というダークサスペンスであり、主人公たちが別の登場人物の生まれ変わりでもあるという、ファンタジー要素もあるすごく面白い作品だ。

映画の方も公開されれば、もちろん観に行くつもりである。
原作を知らないだけに、結末が楽しみな作品だ。