『Cloud クラウド』
黒沢清脚本・監督、菅田将暉主演の映画『Cloud クラウド』を観た。
ひとことで言えば、まあ、いわゆる「テーマ」というやつが、私にはわからない作品だった。
芸達者な役者が見せる怪演、後半のキレた人間たちによる銃撃シーンなど、見どころは充分にあった。
しかし、この映画で黒沢監督が何を語りたかったのか?私にはわからなかった…。
菅田将暉(吉井良介 カッコ内役名)演じる、いわゆる「転売ヤー」が主人公である。
モチーフとして現代的だし、面白い。転売ヤーの実態(=どのように生計を立てているか)も知れて、面白かった。
前述したように、菅田だけでなく、窪田正孝(村岡)、古川琴音(秋子)、岡山天音(三宅)などひと癖もふた癖もあるようなキャラクターを実によく演じていたと思う。
でも…、「んっ??」と思ってしまう部分も多い。
確かに転売ヤーは悪人であるし、商売として良くない。
しかし、吉井が売ってきたものは、最初に売った精密機械にしろ、フィギュアにしろ、仕入れの仕方は多少問題あるにしろ(本音を言えば、ビジネスではよくあるやり方だと思う)、物としては本物だった。
途中バッタモンも売ってるようだが、少なくとも劇中に出てくる商品は、買い手に恨まれる要素は少なかったように思う。
「そんなに恨まれる人間なのか?」。まず、その部分で、私は感情移入しづらかった。
もちろん、そんな人間でさえ、狂ったネット社会ではターゲットになってしまう恐怖を描いていることもわかるが、それにしろ、平気で「殺し」をやる、こんな狂った人間が現代日本にゴロゴロいるとは、いくらなんでも考えられないし、そこにリアリティを感じなかった。
そして、奥平大兼演じる、吉井のアシスタント佐野。
彼はあの若さで、あれだけの(銃に関する)スキルをどういう組織で身につけたのだろう?
リアリティが全くわかない…。
珍しく、腐すようなことを書いてしまったが、そういう内容的な疑問点を考えなければ、銃撃シーン(アクションシーン)、役者の怪演から生まれる恐怖感、二時間は十分に楽しめる映画だということは付け加えておく。