『関心領域』 タイトルから難解すぎる
『関心領域』。そもそも、この日本語自体聞きなれないが、原題の『The Zone of Interest』(=アウシュビッツ強制収容所群を取り囲む地域を表現する言葉)の訳なのだから、そういうことなのだろう。
第96回アカデミー賞 国際長編映画賞受賞作品である。
ブログのタイトルに、難解というワードを使ったが、正直言えば、さほど難解な映像表現をしている映画ではない。ストーリーも単純な話なのだ。
ただ、戦後派であり、日本というヨーロッパから遠く離れた土地で生まれ育った私にとって、ナチスやアウシュビッツの恐怖は教科書などの文字情報でしか触れて来なかった。
そのため、強制収容所の隣に住む、この家族の日常というものの異常性に、なかなか感情移入できないので、あまりうねりのない物語(と不気味な音)がただただ進行してゆく、そんな映画にしか感じられなかった。
これは、「予習が足りなかった」と反省し、公式サイトを見たが、残念ながら内容的には薄いサイトで、あまり大した追加情報も得られなかった。
おそらく、(これは私の想像でしかないが、)翻訳者も、この映画の本質をもっと見せなければならないと考えたのだろう。劇中に詞のないインストルメンタル音楽が流れるのだが、そこに日本語の字幕が載っていたのだ。
普通に考えて、劇中には翻訳すべき情報がないのだから、おそらく、この原曲使用の意図を明示するため、あえて言葉のない部分に、意味を持たせようと字幕を載せたのだろう。
それくらいしか、理由が考えられない。
しかしそんな私でも、監督の意図を感じざるを得ないシーンが終盤にあった。
主人公のドイツ将校が、階段で吐き気を催すシーンがある。
そこにカットバックで、現在博物館となっているアウシュビッツとその展示物(処刑された人たちの大量の靴など)の映像が入るのだが、それが過去と現在のカットバックであるにも係わらず、色を変えるなどの映像的なギミックが一切施されていないのだ。
つまり、それこそが、この監督が訴えかけようとしている、現代にも続く「地続き」の『関心領域』ということなのではないだろうか…。
GW興行と夏休み興行の狭間のため、気楽に観れる大作がない。
アニメがそんなに好きではない者にとって、これでは映画から足が遠のくな…。
配給会社さん、編成考えてよ!