映画『ルノワール』を観た

早川千絵監督って、もっと若い方だと勝手に思っていた。
正直、評価された『PLAN75』も残念ながら観ていないし、監督がPFFを獲っているのが2014年なので、30代だとばかり思っていた。
経歴見ると、意外に苦労人(?)なのですね。

<ストーリー>
日本がバブル経済絶頂期にあった、1980年代のある夏。11歳のフキは、両親と3人で郊外に暮らしている。
ときには大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性をもつ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままな夏休みを過ごしていた。
ときどき垣間見る大人の世界は複雑な事情が絡み合い、どこか滑稽で刺激的。
だが、闘病中の父と、仕事に追われる母の間にはいつしか大きな溝が生まれ、フキの日常も否応なしに揺らいでいく…。

なぜ年齢のことなど経歴を調べたかというと…。
<ストーリー>を見れば分かる通り、この作品は1980年代のある夏を描いている。
そしてそれが(、私のようにおじさんにはよく分かるが)、実にうまく80年代の時代感が描かれている。
ステレオタイプの80年代というわけではなく、「時代の気分」的なものも含め繊細に描いているので、「あ、この人若くないな?」と直感的に思ったのだ。

この監督の経歴を調べると、アメリカで長く過ごされているようだが、この映画の中にハリウッド臭はない。
PFFを獲った人の系譜に連なる作風だと思うし、ヨーロッパが好みそうな映画ではある。

そしてなにより、主演の女の子 鈴木唯がいい。
この年齢で、これだけ自然に、こういう難しい役を演れるのは天才なのだろう。
まあ、このまま大人になれば、この映画にも出演している河合優実のようになるのかもしれない、と感じた。
他にも、リリー・フランキー、坂東龍汰等々、いいキャスティングだし、皆いい芝居をしている。
この監督は、本編キャリアこそ少ないが、人生経験の豊富さが演出力につながっているのではないだろうか。

いい映画である。鑑賞後感もいい。
とはいえ、前段で「ハリウッド臭はない」と書いたように、「少女の成長譚」としての明確な「わかりやすさ」はない。
「スカッとしたい」「泣きたい」など明確に心が揺さぶられるような作品ではないので、映画マニアではない人の意見は分かれる作品ではあると思う。
まあ、そんな作品である。

PS.早川監督は、2021年(『PLAN75』の公開前)に、一本だけHKT48のMVを撮っている。
48グループは大林宣彦監督にMVを撮らせたりもしている。
この作品は、MVとしては決して「よく出来た」作品とは言い難いのかもしれないが、こういうチャレンジ的な監督起用は「秋元康ならでは」と言えるだろう。