My favorite movies『スタンド・バイ・ミー』

映画『スタンド・バイ・ミー』。
夏になると、繰り返し見たくなる青春映画だ。
<ストーリー>
オレゴン州の小さな田舎町キャッスルロック。
それぞれに家庭の問題を抱える4人の少年たちが、町から30キロばかり離れたところに列車の轢死体が放置されているという噂を聞き、死体探しの旅に出る。
『スタンド・バイ・ミー』は、私の大好きな映画『恋人たちの予感』のロブ・ライナーが監督した青春映画で、スティーヴン・キングの小説を原作としている。
ライナーはもともと俳優やコメディ番組の演出で知られていたが、この作品でドラマ演出の力量を証明した。
過剰な演出や説明を排し、少年たちのまなざしや沈黙を丹念に拾い上げ、物語に自然な呼吸を与えている。
「1950年代末のアメリカを舞台に、12歳の少年4人が行方不明になった少年の死体を探す小さな冒険に出る」。筋だけを追えば単純だが、その道程には子供時代の終わりと大人になることの痛みが織り込まれている。
ライナーは、郷愁をただ美しく飾るのではなく、友情の温かさと同時に、家庭環境や社会的立場によって刻まれた孤独も描く。
列車の橋を渡る緊迫感、キャンプファイヤーを囲んでの他愛ない会話、その背後にある言葉にできない不安。
それらは観客自身の記憶を呼び起こす装置として機能する。
特に終盤、物語を回想として語る現在の視点が、かつての時間の儚さを際立たせている。
主演のひとりであるリバー・フェニックスが演じたクリス・チェンバーズは、この映画の心臓部といえる存在だ。
周囲からは不良と見なされ、将来を諦めているように見えるが、内面は聡明で、仲間思いで、真っ直ぐだ。
リバーは当時15歳だったが、その演技は年齢を超えた深みを備えている。
彼の視線や立ち姿には、少年でありながら大人の哀愁が宿っており、友人に未来を託すラストの場面は胸を締めつける。
後年、リバーは『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』や『マイ・プライベート・アイダホ』などで存在感を発揮したが、23歳の若さで急逝した。
その早すぎる死を知る今、彼のクリスはより一層、失われた可能性の象徴として響く。
『スタンド・バイ・ミー』の魅力は、過ぎ去った時間への懐かしさと、それを取り戻せない切なさを等しく描いた点にある。
ライナーは観客に「子供時代は二度と戻らない」という事実を突きつけながら、その時間が確かに存在したという証を、少年たちの旅路に刻み込んだ。
ラストの「子供時代の友達ほど素晴らしいものはない」という言葉は、甘い理想ではなく、過ぎ去った夏の日々への静かな敬礼だ。
この映画は青春映画の枠を超え、人生の一瞬の輝きとその喪失を永遠に焼き付けた作品だと思う。