アメリカの分断。『シビル・ウォー』

「シビル・ウォー」。つまり、アメリカの「内戦」を描いたフィクションである。
しかし、現在のアメリカの「分断」を目にすると、これが、そう遠くない未来にあり得る話なのではないか?そう感じてしまうのだ。

なぜなら、この映画は勧善懲悪のフィクションではなく、戦争時における人々の狂気が描かれており、その中で描かれる過激な行動は、トランプ派のそれと、実によく似ている部分も多いからだ。
(香港出身のジャーナリストを白人民兵が撃ち殺すシーンは、まさに現在のアジアヘイトを映し出しているようだ)

とはいえ、エンターテインメントとしてストーリーを成立させるため、最終的にWF(西部勢力)が政府軍から勝利を収める。
しかし、それはあくまで形式上の勝利であって、アメリカ人同士の内戦は、もはや誰が敵で、誰が味方かもわからないカオスなのだ。

この映画の恐ろしいところは、ニューヨークからワシントンD.Cまでの移動の過程で、一人の新人戦場カメラマンが成長してゆくと同時に、戦場でシャッターを切る高揚感から、やがて人としての心をなくしてゆく過程も描かれている。
憧れていた先輩カメラマンが、自分を庇い銃撃死してしまう姿を、冷静に撮り続けるラストのくだりは、もしかしたら、この映画のサブテーマに「ジャーナリストの正義とは?」というものもあるのではないか、と感じてしまった。

しかし、まあ、銃撃シーンの迫力はすごいよ。
それだけでも、劇場で観るべきものだと思う。おすすめです。