『ラストマイル』

これ、いい映画でした!
観ることを奨めます。

まず、脚本が良かった。
原作物ではなく、完全オリジナル作品ということも素晴らしい。
サスペンス要素もあるストーリーが面白いというだけでなく、複線や、その回収もきちっとされており、良質なエンターテインメント作品に仕上がっている。
モチーフが、物量が抱える「2024年問題」なので、身近で時代性もあり、容易に作品に没入できる所も良いと感じた。

そして、私が評価したいのは、何と言っても、舞台設定が明らかに“Amazon”であるところだ(アメリカ本社設定なので、楽天ではないだろう)。
TBSという、報道局が作る映画なので、こういった時代性や社会問題意識を持つことは重要であると思う。
しかし同時に、地上波の無料放送局は、広告収入で経営を賄っている部分が大きく、Amazonのようなナショナルクライアントを敵に回すことが憚られるのも事実だ。
おそらく、この映画を実現化するという話になった時は、広告営業部などから反発があったのではないかと推察する。
そういった企業の利益至上主義を堂々と批判的に扱い、ただそれを企業批判だけでなく、エンターテインメントに昇華しているのは、何よりも素晴らしいと感じた。

もちろん役者も良かった。
宣伝のCMだけ見ていると、満島ひかりの役どころは、正義の企業戦士のように見えていたが、実際は、過去のあるミステリアスなキャラクターで、所々「犯人なのでは?」と思わせるような部分もあり、そういった難しい役どころを、彼女は実にうまく演じていたと思う。
岡田将生も、阿部サダヲも、火野正平もすごくよかった。
まあ、宣伝的なフックをつけたかったためか知らないが、「シェアードユニバース」ムービーとして、テレビドラマ『アンナチュラル』『MIU404』の登場人物たち(石原さとみ、綾野剛、星野源等々)も登場するのだが、そんなのどうでもいいほど、映画として素晴らしかったと思う。

昨今、漫画原作のドラマ化の方法論が問題になったが、私は正直、こういったオリジナルストーリーを製作者が作り続けることで、日本の映画やドラマ製作者の実力が上がり、原作物が衰退してゆくのが理想なのではないかと思えるほど、『ラストマイル』は面白い作品であった。