打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

映画『キリエのうた』を観た。いい映画だった。
(ただし、震災の描写が結構長くあり、あまりネタバレになることは言えないが、キリエのその時の状況を鑑みると、ちょっと私には辛い描き方ではあった…)

元々、岩井俊二さんは好きな監督で、なにしろ『スワロウテイル』が大好きな映画だった。
実は、具体的な仕事ではないが多少お話ししたこともあり、思い入れのある映画監督でもあるので、作品はすべて観ている。

映画的には、音楽映画というジャンル(公式がそう呼んでいる)ではあるが、だからと言ってミュージカル的な作品ではなく、まあ、いわゆる岩井俊二テイストな、少女から大人の女性への成長譚でもある。
しかも私がノスタルジックな想いに誘われたのは、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の美少女 奥菜恵が、広瀬すずの母親(場末のスナックのママ)役で出演していたことだ。
時の経つのは早いものだなあ…。
(まあ、岩井監督も還暦を過ぎておられるのだから、仕方あるまい)

ただ、ちょっと気になったのは、ルックの問題だ。
初期の岩井監督の撮影監督と言えば、お亡くなりになった篠田昇さんであるが、あの頃の『フィルム感』を記憶に焼き付けた者にとっては、どうもこの作品の『ビデオ感』(しかも、SDビデオで撮影しているんじゃないかと見紛うほどの滲み具合)は、どうにもいただけない。
正直、「これは意図しているものなのだろうか?」と訊きたくなるほどのルックであった。

本当はもっと内容について書きたいのだが、まあネタバレになるので、これくらいにしよう。
なので、冒頭に書いた「多少お話ししたことがある」ことについて書きたいと思う。

もう20年位前の話だが、当時、駆け出しのプロデューサーだった私は、知人だった釜山映画祭のコーディネーターにお願いして、作品は出品していなかったが釜山映画祭に参加させてもらった。
その時、日本の役者やスタッフの打ち上げに参加させていただいたのだが、打ち上げ会場に向かうタクシー何台かに分乗した際、岩井監督と同乗することになった。
その時の話の内容的には、「プロデューサーとして映画をご一緒したい」という僕のアプローチに対して、当時の岩井監督には、おそらくプロデューサー不信があったのだろう、延々プロデューサー論(批判)を聞かされた思い出がある。(確か、予算配分についての話で、当時はまだドローンがなく空撮と言えばヘリ撮であったが、絶対に必要な空撮に予算が割けず、プロデューサーは適切な予算配分バランスを考えなきゃダメだ、と説かれた記憶が…)
まあ、体よくあしらわれたのだと思うが、今となってはいい思い出だ。

ちなみに扉の写真は、
『大観覧車、正面から見るか?横から見るか? …いや、横からはないな。』
の写真。

では、また書きます。