『ミッシング』石原さとみ渾身の演技
映画『ミッシング』を観た。
「つらい…」。私の鑑賞後(否、途中からかな)の気持ちは、まずその言葉になる。
石原さとみはすごかったし、映画自体には引き込まれた。
しかし、途中から「これ、絶対ハッピーエンドにはならないな…」とわかってしまうほど「つらい」映画だった。
(宣伝などで、ある程度内容は公開されているので、ネタバレになる部分も語ってしまうが)
まずオープニングで行方不明になった娘が出てくるのだが、この子はオープニングのみ。
タイトルが終わってからは、もうすでに行方不明になっており、その後は一切出て来ない。
つまりは、母親(石原さとみ)と父親(青木崇高)と母親の弟(森優作)の闘いと苦悩が延々に展開される。
娘を失ったことで、少し狂気じみてしまった妻を支える青木崇高の演技もいいし、内向的な弟を演じた森優作もいい。
しかし何と言っても、この難役を演じている石原さとみが素晴らしい。
私は仕事でご一緒したことはないが、もう十年以上も前に、ホリプロタレントスカウトキャラバンの会場で一度だけご挨拶したことがある。
その時彼女はプレゼンター的な立場で来ていたのだが、ホリプロの人間に紹介され一言二言だけ言葉を交わしたのを覚えている。
当時の私の印象と言えば、デビューしたての女優さんらしく明るくニコニコしていたが、身長も低いし、まあ美人ではあるので「テレビタレントとして頑張るのかなあ」位の印象だった。
正直、のちにこんな大女優になろうとは夢にも思わなかった。
(まあ、そういうのがピンと来ない所が、私のダメな所なのだろう…)
映画に話を戻す。
彼女の演技は素晴らしかった。
しかし、あえて言うと…。その演技がすごいだけに救いが無さ過ぎて…。
もちろん、最後に「娘さんも見つかって万々歳」とはならないとは思っていたが、私はどこかで、母親が「諦める」ことを望んでしまっていた。
それほど私にはきつく感じた。
サブテーマで、マスコミ報道の在り方も描かれていたが、思い悩むディレクター(中村倫也)もまた暗いし最後まで報われない役どころだった。
せめてこのキャラだけは能天気で、最終的にボコボコにされるようなカタルシスを私は望んでしまったよ…。
もしこれから観る人は、精神的に余裕のある状態で観ることを奨めます。
次は、ハリウッドの楽しいやつを観よう!