『くれないの武者の祈り』(写真とタイトルは関係ありません)

「乗り物とは、人が労せずにその身を運んでもらう代償としてとじこめられる一定の面積あるいは空間である」。

これは別に国語辞典に掲載してある「電車」の説明ではなく、伊藤海彦氏が電車について語った随筆「窓の絵」の一節だ。
この言葉は、江ノ電に対する誉め言葉(?)として語られている一節でしかないのだが、三半規管が弱く、乗り物酔いをしやすい私には、この「代償としてとじこめられる」という言葉が妙にしっくりくるので、なんとなく好きな随筆だ。
この随筆の中でも語られているように、江ノ電の窓から見える風景は、まさに「窓の絵」で、私は特に鎌倉高校駅あたりからの海景が好きで、ぼうっと、窓外を眺めながら無為に流れる時間が至福であったりする。

しかし最近は『スラムダンク』(だと思う。なにせ、世代ではないし読んでいないので)の影響で、平日の昼間でも混んでいることが多く、たまに外が見えないくらいの時さえある。
ただそれを腹立つと思うほど、血気盛んではないし、しかも、この観光客のうち半分以上は、外国人観光客ではないかと思われ、逆に、「さすが日本のコミック(アニメ?)の影響力は大したものだ」と感じることの方が多い。
やはり純粋に景色を愛でたいのなら、その駅に降りて、海の色とにおいを感じればよい。江ノ電から見える景色は、見えないことも含めて、時代を感じる「窓の絵」ということなのだろう。

話は変わるが、先日のコラムで、中華「大新」について触れたこともあり、ふらっと寄ってみた。
大新は、大新ラーメンが有名なのだと思うが、私は(ちょっとだけ)ラーメンを控えていることもあり、食事は餃子のみにした。
ただ昼の時間は店が混んでいることと、前回のコラムで書いたように私は胃が弱いので、夕方五時くらいにお邪魔した。なぜなら大新の餃子はすごく美味しいけれども、ニンニクも強いので、注文は一皿のみにして、ゆっくり瓶ビールを楽しんだ。

街中華の話を書いていると、不思議と、今まで行ってなかった店にも行きたいと思ってしまう。
そういうわけで、次かその次あたりには、鎌倉を離れ、大船の街中華を楽しみたいと思っており、今から行きたい店もチェックしようと思っている。
それでは、また次回。