アマプラで『早乙女カナコの場合は』を観た

3月14日公開なので、こちらの作品は3ヶ月も経っていない。
番販の場合、公開後に各テレビ局と交渉を開始する場合も多いが、例えばテレビ局が製作委員会に入っているのであれば、その局での放映がファーストプライオリティなわけだから、放映時期は、その映画の収益が一番大きくなるよう、その局を中心に製作委員会で考えることになる。

しかし、Amazon Primeでの二次利用(一次を劇場として)の場合、製作委員会とAmazonとの間でディールを結ぶことが多く、しかも劇場公開前に、既に販売ディールを終えている場合もある。
その場合製作委員会としては高値で販売したいため、時期もAmazon側に譲歩し、劇場公開から間を置かずに配信することを許すことになる。
ということは当然、Amazon Prime契約者には無料で観せることになるので、劇場で入場料を取ってのロングラン上映でのヒットは難しくなる。

今までブログを書いてきた作品の中でアマプラでの配信が早かったもの、例えば『室町無頼』は、映画メジャーである東映が製作の幹事会社であり、配給も東映が行なっているので、沢山の劇場で一気に公開しロングランは想定しないビジネススキームなのだろう。
とはいえ館数が多いのでヒットする可能性はもちろんある。

では、この作品はどうであろうか?
ネット上の記事で見ると、全国92館での公開。正直、決して多くはない劇場数だ。
それでも、公開後3ヶ月もしない内に、無料(サブスク)配信となってしまった。

さて、前置きが長くなってしまった…。

<ストーリー>
大学進学と同時に友達と二人暮らしを始めた早乙女カナコ。
入学式で演劇サークル「チャリングクロス」で脚本家を目指す長津田と出会い、そのまま付き合うことに。
就職活動を終え、念願の大手出版社に就職が決まる。長津田とも3年の付き合いになるが、このところ口げんかが絶えない。
⻑津田は、口ばかりで脚本を最後まで書かず、卒業もする気はなさそう。サークルに入ってきた女子大の1年生・麻衣子と浮気疑惑さえある。
そんなとき、カナコは内定先の先輩・吉沢から告白される。
編集者になる夢を追うカナコは、長津田の生き方とだんだんとすれ違っていく。
大学入学から10年―それぞれが抱える葛藤、迷い、そして二人の恋の行方は。

以前、Xでも書いたが、私の好きな映画に『恋人たちの予感』(出演:ビリー・クリスタル/メグ・ライアン)がある。
これも、大学卒業後に知り合い結ばれるまでの11年間の話なのだが、いわゆるロマンチックなラブコメディであり、そのウィットに富んだ台詞、飽きさせない脚本構成、そして名優たちの演技、どれも素晴らしかった。

しかして、この作品はどうか?
まずジャンルを問われてもよく分からない。それはジャンルがないのが問題なのではなく、説明できないような空間、演技・演出・脚本含め、抑揚のない、そう一言で言えば、テーマがよくわからない時間が流れていく。
なので、このブログを書くに当たっての鑑賞後感が表現しようがない。

で、前段の話に戻るのだが…。
これ、公開後3ヶ月も経たずでのAmazon Prime配信に応じる代わりに、製作側はAmazonに高値での販売契約を結んだのではないだろうか?それも、その契約は劇場公開のかなり前に。
92館=中小規模で上映して、3ヶ月経たずに配信だと、最初からロングランでのヒットは想定していない。
つまり、劇場でのヒットは想定していない、としか思えない。

延々色々書いてしまったが、やはり劇場でのヒットを想定していないスキームの映画は、企画から、どこか何かが足りないのだろう。
まあ、「Amazonから沢山貰ってるから」という話で、それがビジネスだといえば、それで終わりなのだが…。
それでも、なんとも表現のしようのない「モヤモヤ」が、映画内外に残る映画だった。