映画『フロントライン』を観た

緊迫感のある面白い作品。
役者も良かったし、映像的にもスケールはあるが、奇を衒わずにまっすぐに真実を描こうとした作品だと感じた。
<ストーリー>
未知のウイルスに最前線で立ち向かったのは、我々と同じ日常を持ちながらも、眼の前の「命」を救うことを最優先にした人々だった。
船外から全体を指揮するDMAT指揮官・結城(小栗旬)と厚労省の立松(松坂桃李)、船内に乗り込んだ医師の仙道(窪塚洋介)と真田(池松壮亮)、そして羽鳥(森七菜)をはじめとした船内クルーと乗客たち。
TV局の記者・上野(桜井ユキ)らマスコミの加熱報道が世論を煽る中、明日さえわからない絶望の船内で、彼らは誰1人としてあきらめなかった。
全員が下船し、かけがえのない日常を取り戻すために――。
129分の作品。
この事件については、描くべき事実がいくつでもあっただろうし、逆にもっと長くても良かったと感じるくらい、あっという間の二時間だった。
以前の日本映画であれば避けていたような題材に、オリジナルの脚本で挑んだ製作陣には拍手を送りたい。
むしろ気になったのは(、業界人のスケベ根性もあるが)、キャスト、スケール含め、これほどの大作の製作委員会に地上波テレビ局が加わっていないことだ。
企画・脚本・プロデュースの増本氏は、元フジテレビの社員である。
古巣の映画部には提案しなかったのであろうか?
もし、インベストの提案をしたにもかかわらず断られたのだとしたら、ちょっとフジテレビも料簡が狭すぎる気がする。
確かに、D-MAT(医師チーム)、厚労省官僚、ダイヤモンドプリンセス号船員、いずれも「良く」描かれていたが、メディア(放送局)と暴露動画を流した感染症医師(おそらく元ネタは岩田教授)だけは、少しだけ「悪く」は描かれていた。
しかしそれは事実であり、件の中居事件も含め、もはやメディアの在り方については、自らを戒め反省しなければならない時期に来ている。
その意味で、フジテレビ初め、他の地上波放送局が製作に参加していないのは、非常に残念に感じた。
おそらくAmazon or楽天を描いたであろう『ラストマイル』も含め、現在の日本が抱える問題点をオリジナル脚本で描いた作品が、やはり映画人としては、もっと増えてほしいと思っている。
しかしそれには、大手配給会社や地上波テレビ局など大資本を持つ会社が、時間のかかるオリジナルの企画開発に対して積極的でなければならない。
この作品のようにやるべき価値があるものに対して、もし消極的だったのであれば、それは考え直していただきたいものだ。