映画『スパイダーマン ブランド・ニュー・デイ』

『バットマン』は大好きだ。
多分、ほとんどのシリーズを観てると思う。
で、『スパイダーマン』も好きな方だ。
だから、大きな勘違いをしていた…。

<ストーリー>
愛する人たちを守るため、全世界の人々から自分の存在の記憶を抹消する道を選んだピーター・パーカー。
自分のことを誰も知らないニューヨークで孤独に暮らしながら、スパイダーマンとして犯罪と戦い、街の人々を守ることに全力を尽くす日々を過ごしていた。
しかし人々のスパイダーマンへの期待が高まるにつれ、そのプレッシャーが彼の存在そのものを脅かし、命に関わる身体的変異を引き起こしてしまう。
時を同じくして、街では不可解な犯罪が頻発し、かつてない脅威がスパイダーマンに迫る。

映画『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』を観るにあたって、まず自分でも驚いたのが、これまでの「(MCU内)スパイダーマン」シリーズを、ほとんど観ていなかったという事実である。

そもそも「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」とは、マーベル・スタジオが製作する映画やドラマを同じ世界観の中で展開させ、作品同士をキャラクターや物語でつなげていく巨大なシリーズだ。
単独の映画でありながら、別の作品の出来事や人物が登場することで、一つの作品群そのものが壮大な物語を形成している。

トム・ホランドがピーター・パーカーを演じる「スパイダーマン」シリーズも、そのMCUの中に組み込まれた作品である。
『スパイダーマン:ホームカミング』から始まり、『ファー・フロム・ホーム』『ノー・ウェイ・ホーム』と続き、本作が第4作となる。
ソニー・ピクチャーズが映画化権を持つスパイダーマンを、マーベル・スタジオと共同でMCUに登場させたという、少々特殊な位置づけのシリーズでもある。

しかし、私は同じアメコミの『バットマン』が好きで、過去のシリーズ作品もほとんど観てきた。
そのため、なぜか「スパイダーマンも当然、全部観ているだろう」と勝手に思い込んでいた。
ところが、いざ本作を観る段階になって確認してみると、なんと『ホームカミング』も『ノー・ウェイ・ホーム』も観ていない。
唯一、今回観るにあたって『ファー・フロム・ホーム』を改めてAmazon Prime Videoで鑑賞した程度である。

そんな状態で『ブランド・ニュー・デイ』を観たのだが、意外にも、これが単体の映画としてかなり楽しめた。

何より、ピーター・パーカーが「誰にも自分の存在を覚えられていない」という状況から、新たな人生を始めようとする設定が面白い。
孤独を抱えながらもスパイダーマンとして街を守り続けるピーターの姿には、これまでのシリーズを詳しく知らなくても感情移入できる。
トム・ホランドのピーターも相変わらず魅力的で、アクションも含めて、娯楽映画として非常によく出来ている。

ただ、観終わってから改めてシリーズについて調べてみると、やはり「MCU好き」でなければ完全にはついていけない部分も多いと感じた。

その象徴が、本作の重要人物として登場するパニッシャーだ。
ジョン・バーンサル演じるパニッシャー=フランク・キャッスルは、あたかもスパイダーマンの「常連」のように現れたかに見えるが、実際にはMCUのドラマ作品などで描かれてきたキャラクターであって、前三作には出ていない。
つまり、『ノー・ウェイ・ホーム』までしか観ていない人間にとっても、必ずしも馴染みのある存在ではない。

こうした「MCUを観ていることが前提」のキャラクターや設定が自然に入り込んでくるのがMCUの魅力であり、同時に敷居の高さでもある。

それでも『ブランド・ニュー・デイ』は、スパイダーマンという一人の青年の物語として十分に成立している。
だからこそ、私のような“実はシリーズをほとんど観ていなかった人間”でも楽しめたのだと思う。
ただし、本作を本当に味わい尽くすには、やはりMCUという巨大な世界を知っていたほうがいい。
今回、改めてそれを痛感した。