映画『木挽町のあだ討ち』
原作を読んでいなかったし、予告編を見て、ぜひ観たいと思っていた映画だ。
観終わった感想としては…。
まあ途中からオチが読めてしまったミステリーみたいな感じか…。
そんな印象がまず頭に浮かんだ。
<ストーリー>
時は江戸時代。ある雪の降る夜、木挽町の芝居小屋「森田座」のすぐ近くで、美しい若衆・菊之助が父の仇討ちを見事に成し遂げた。その事件は多くの人々に目撃され、美談として語られることになる。1年半後、菊之助の縁者だという侍・総一郎が、仇討ちの顛末を知りたいと森田座を訪れる。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞くなかで徐々に事実が明らかになり、やがて仇討ちの裏に隠された「秘密」が浮かび上がる。
決してつまらないわけではない。
むしろ丁寧に作られた作品なのだが、物語の仕掛けが比較的早い段階で見えてしまうため、サスペンスとしてのドキドキ感は途中から少し弱まってしまったように感じた。
まず、時代劇としての映像はとても奇麗だった。
木挽町の町並みや芝居小屋の雰囲気、そして登場人物たちの衣装など、全体的に美術や撮影はかなり丁寧に作られている印象だ。
江戸の空気感をしっかりと作り込もうという意図が伝わってくる。
画面を見ているだけでも、いわゆる“時代劇らしい世界”に入り込める楽しさがある。
物語の構造も興味深い。
関係者たちの証言が少しずつ積み重なり、伊納清左衛門という人物の過去や行動が徐々に浮かび上がっていく。
いわば証言形式で真相が形作られていく構成で、観客は断片的な情報をつなぎ合わせながら物語の核心に近づいていく。
この「少しずつ謎が解き明かされていく展開」は、確かに面白い。
芝居小屋の人々それぞれの語りが微妙に異なり、そのズレが物語の奥行きを生んでいる。
ただし、個人的にどうしても引っかかったのは、伊納清左衛門が家を救うために取った行動である。
彼の事情や追い詰められた状況は理解できるのだが、その選択に対して観客として強く共感できるかというと、正直なところ少し難しかった。
物語の中心にいる人物だけに、もう少し感情的に寄り添える動機づけがあれば、ドラマとしてさらに深みが出たのではないかと思う。
さらに言えば、森田座の面々が行った“ある行為”の意味も、比較的早い段階で想像がついてしまう。
もちろん細部の事情は後から明らかになるのだが、物語の大きな仕掛け自体は途中で見えてしまうため、ミステリーとしての驚きはどうしても薄れる。
後半は「なるほど、やはりそういうことだったのか」と確認していく感覚に近かった。
とはいえ、作品全体としての完成度は決して低くない。
芝居小屋の人々の人情や、江戸の庶民社会の温度感は魅力的に描かれているし、役者陣の演技も落ち着いていて見応えがある。
派手な展開ではないが、丁寧に積み重ねられた物語をゆっくり味わうタイプの映画だろう。
大きな驚きはなかったものの、江戸の空気を感じながら物語を追う時間は心地よかった。
まずまず楽しく観ることができた作品ではある。
